2004年 11月 9日 火曜日 晴れ
ハーゲン弦楽四重奏団のベートーヴェンの大フーガを聴き直しています。自分はどちらかというと戦前の演奏を中心に聴いてきているので、今のカルテットのように弦楽器が人間の声の模倣でないことに対し、ある種の戸惑いがあるんです。それでも、このハーゲンSQの仕事には脱帽せざるをえないです。
すべての贅肉を切り落とし、各声部の流れを明確に聴かせる演奏です。彼らは音楽に陶酔したりはしない。音楽を徹底的に自らと切り離した地点で対象化したところから彼らの演奏は、出発している。だから彼らの音楽はどのような事があっても常に醒めています。彼らにとって鋭角的で激しいフォルテも、繊細なカンタービレも、スコアに書いてある秘密を解読するためにのみ意味を持っている。それ故にかえって我々の気付かなかった作品に内在する尋常ではない狂気や哀しみが、白日の下に晒される。
この手腕の鮮やかさは実に見事なものです。
カテゴリー:classical
/ トラックバック:0
/ コメント:0
この記事のURL: http://classicalmusic.blog58.fc2.com/blog-entry-30.html